抄録
ニカメイガのように卵塊で産卵する昆虫ではふ化幼虫が1卵塊を基とする幼虫集団を形成して生活するので,ほ場全体における幼虫は塊状分布をする。この塊状分布の基本的単位となる卵塊性幼虫集団の性格を明らかにするためにニカメイチュウを用いて1960年および1961年にわたって野外のイネに人為的に卵塊を接種して二,三の観察を行なった。
2化期の若令期においては,卵塊性幼虫集団の大きいほど幼虫の生存率が高くなり,幼虫集団の大きさと幼虫生存率との間には高い正の相関関係があるが,令期が進むにつれて集団の大きいほうが小さい集団に比べてより多くの幼虫が分散し,分散による死亡が多くなるためにこの関係は消失すると考えられる。
一方,1化期においてはイネの条件が十分でなく,幼虫の生存率が低くなるために集団の大きさと生存率との間に相関的関係が見られない。