日本応用動物昆虫学会誌
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寄主の栄養条件とトウモロコシアブラムシの増殖
伊藤 嘉昭平野 千里
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1963 年 7 巻 2 号 p. 132-139

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抄録
トウモロコシアブラムシはオオムギ,トウモロコシなどイネ科植物の害虫として知られているが,コムギにはほとんど寄生しない。栄養条件の異なる3区のコムギおよびオオムギ苗(無窒素砂耕区,高窒素砂耕区,施肥土壤区)における個体群増殖,生存日数および産仔数を調査した。
1. どのような栄養条件下でも,オオムギ区のアブラムシはコムギ区のアブラムシにくらべて速かに個体群を増し,生存日数は長く,また産仔数も多かった。
2. オオムギ区の間では,無窒素区での個体群増殖が高窒素区や施肥土壤区にくらべてやや劣っているが,生存日数や全産仔数は寄主の栄養状態によってほとんど影響をうけていない。
3. コムギ区の間では,無窒素区ではゆっくりと個体群を増加したが,高窒素区や施肥土壤区ではほとんど増加せず大部分は絶滅した。またリーフ・ケージで生存日数や産仔数をしらべたところ,無窒素区が最も高く,以下高窒素区,施肥土壤区の順であった。
4. 以上の結果を総合すると,トウモロコシアブラムシの寄主としての好適性は次の順となる:施肥土壤区オオムギ=高窒素区オオムギ>無窒素区オオムギ>無窒素区コムギ>高窒素区コムギ>施肥土壤区コムギ。
5. コムギ苗の寄主としての好適性は苗体中の糖分と正の相関をもち,窒素含量と負の相関をもつようである.
6. コムギ苗はトウモロコシアブラムシに対して抗生的に作用する物質を含有している可能性が示唆される。その物質の合成能あるいは活性は,窒素欠乏条件下では抑制されるのではないであろうか。
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