脊髄硬膜外血腫は,血腫形成により麻痺などの神経症状が進行する疾患である.脳血管障害は慢性腎臓病(CKD)患者にとって重要な合併症であるが,脊髄硬膜外血腫の報告は少ない.63歳男性.糖尿病性腎症を原疾患とするCKD G5A3で,既往歴に,脳梗塞,労作性狭心症があり,アスピリン100 mgを内服していた.頸部の伸展運動を行った際に突然,頸部後方の疼痛,四肢の麻痺が出現したため救急車で来院.頸椎MRIでC2-4レベルに血腫を認め,脊髄硬膜外血腫と診断した.ただちにC2-5の血腫除去術を施行した.術後より麻痺は改善傾向となり,手指の巧緻機能も回復した.CKDに対し血液透析を導入し退院.麻痺の改善後,腹膜透析の手技も獲得でき移行した.脊髄硬膜外血腫は,脳梗塞との鑑別に難渋する可能性があり,また,その関連要因は,血液凝固異常,高血圧などが指摘されており,CKDの合併症として,注意を要すると考えられた.