日本応用動物昆虫学会誌
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ミナミアオカメムシの幼虫集団の大きさと死亡率,令期間およびふ化・脱皮の斉一性
桐谷 圭治
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1964 年 8 巻 1 号 p. 45-54

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抄録
ミナミアオカメムシの卵は卵塊でうまれ,1令幼虫はふ化脱出後の卵殼上に集合し,2令では2頭以上の集団の穂当りの大きさは13∼14頭,3令は6∼7頭で4令以後では集合性はみられない。この集合の意義を明らかにするため産卵後24時間以内の卵塊を1, 2, 5, 10卵区に分割して25°C下でバレイショまたはインゲンのさやを与えて調べた。
(1) ふ化および脱皮の斉一性は,卵および若令期では大きい集団ほど斉一であるが,老令期ではこの関係が逆転する。
(2) 令期間は,1令期では集団の大きさと無関係であるが,2令では集団が大きいほど短縮する。4, 5令ではこの関係は逆転する。3令期は両者の中間を示す。
(3) 日別死亡率は,1令では集団の大きさと無関係であるが,2令では集団が大きいほど低い。5令では逆に10頭区で死亡率が高くなる。3, 4令期は両者の中間で中間密度で死亡率が低い。
(4) 以上の結果1頭区は全死亡率および幼虫期間がもっとも高くかつ長いが,2頭区ではもっとも低くかつ短かくなる。
(5) 幼虫の体色は密度によっても支配されることがわかった。すなわち高密度は黒化の傾向を強める。
(6) 羽化成虫の体重は高密度区のものほど雌雄とも有意に減少した。
生命表によれば自然では若令期に高い死亡がおこるが,幼虫が集合する習性はこの時期を短縮する効果をもたらし適応的な意義がある。また日別死亡率が若令期では集団サイズが小さくなると高くなることは,集団成員の部分的な破壊をもたらす死亡要因は,生き残った幼虫の生存率をも集団の破壊の程度により左右する可能性があることを示す。しかし,自然における集合性の意義を評価する場合,集合性のために死亡要因が集団単位にall or none的に働くことが多い事実を考えにいれる必要がある。
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