抄録
コカクモンハマキ,Adoxophyes orana FISCHER VON RÖSLERSTAMMを合成飼料によって無菌的又は半無菌的に飼育し,茶葉に含まれる幼虫生育因子の化学的性質についてしらべ,さらに,数種の粗物質ならびに純物質の生育因子活性をしらべた。
この幼虫生育因子は熱水,70%エチルアルコール,50および67%アセトンに可溶性,ベンゼン,クロロホルム,アセトン,エチルアルコールおよび水飽和醋酸エチルに不溶性であり,酸,アルカリには比較的安定な有機化合物である。また,酸性,アルカリ性からのエーテル抽出,およびイオン交換樹脂に対する性質から,この生育因子は中性物質であると考えられる。さらに,中性醋酸鉛で沈殿し,活性炭に吸着されない。また,含水エチルアルコールに対する挙動から,この因子が単一な物質ではなく,少なくとも2つの物質から成るのではないかと考えた。
試験した粗物質のうち,強い生育因子活性が認められたものは茶葉粉末,アルファルファ水抽出物,および酵母水抽出物の3つであり,弱い活性がパン用酵母,粉末酵母(エビオス)およびレンダーエキス粉末に認められた。その他の水稲茎水抽出物,ペプトン,カゼインソーダ,バクトカシトン,アルブミン,デキストリン,可溶性デンプン,および茶葉から得た粗カテキンはいずれも活性を示さなかった。
試験した純物質はいずれも生育因子活性を示さなかった。すなわちこの生育因子は次のいずれでもない。アスコルビン酸,ビタミンB12,リボ核酸,グリシン,シスチン,グルタミン,アスパラギン,アラビノース,キシロース,フラクトース,ガラクトース,マンノース,ソルボース,ラムノース,シュクロース,ラクトース,ラフィノース,トレハロース,メリビオース,セルロース,アドニトール,マンニトール,アコニット酸,酒石酸,フマール酸,マレイン酸,リンゴ酸,修酸,コハク酸,および酒石酸。