本研究では,在宅介護事件の状況や介護者・被介護者の基本的属性を,心中事件と殺人事件および都市と地方の地域特性を比較検討することを目的とした.方法は,過去10 年間の朝日新聞記事から,被介護者が65歳以上の高齢者である介護事件に絞り,最終的に224 件を分析対象とした.事件の時期や場所,介護者と被介護者の年齢および性別,家族関係などを調査し,心中と殺人事件および都市と地方の介護事件の地域特性を比較検討した.その結果,心中と殺人事件は有意な関連はなく介護事件として扱った.都市の事件は43.8%で,地方の事件は56.3%であった.都市は夫婦間の事件が60.6%に対し,地方は親子間の事件が52.5%で,地域特性と家族関係に有意な関連がみられた(p = .0019).全国の都市の割合に比べて,報道された介護事件は都市が多いことが示され,都市は夫婦間,地方は親子間が介護事件に発展しやすいことが明らかになった.