日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
14 巻, 2 号
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目次
特集:動き出した高齢者医療と在宅ケア
総説
  • 川添 恵理子
    原稿種別: 総説
    2011 年14 巻2 号 p. 18-25
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,過去10 年間の退院計画に関するわが国の文献を概観し,退院計画に関する概念がどのように用いられているか,その知見をまとめ課題を検討することである.15 件の文献検討を行った結果,退院困難が予測される対象者の特徴は,医学的状況と社会的状況に分けられ,対象者を把握する方法として,入院時スクリーニング票が開発されていた.退院計画の実施については,退院支援部署設置による患者や看護師への効果が明らかになった.一方,入院早期から継続した退院計画の実施,人員配置,病棟看護師の教育など病院全体で取り組むシステムの整備についての必要性が示唆された.

原著
  • 奥村 朱美, 山本 則子, 小林 小百合, 岡本 有子, 深堀 浩樹
    原稿種別: 原著
    2011 年14 巻2 号 p. 26-33
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,訪問看護の認知症ケア構造の概念化を目的に,訪問看護師12 人に半構成的面接を行い,グラウ ンデッド・セオリー・アプローチを参考とし分析した.協力者のうち女性は11 人,看護師経験年数は平均 17.2 年,訪問看護師経験年数は平均8.8 年であった.事例13 人のうち,女性9 人,年齢は60 〜80 代,要 介護度は2 〜5 であった.訪問看護師の認知症ケアには,1)家に入れてもらう,2)継続して家に入れても らえる状況をつくる,3)生活上の問題を解決する,4)療養者に楽しみをつくる,5)サービスを利用しな がら療養体制を整える,6)家族が介護しながらも生活できるよう支援する,7)サービスを再調整し訪問看 護を徐々に縮小する,という実践プロセスが抽出された.また,プロセスの基礎となる8)療養者・家族の 経過を展望しそれを踏まえて実践する,というカテゴリーが抽出された.認知症療養者への訪問看護では経 過を展望し段階を踏んで援助する必要性が示唆された.

  • 堀江 淳, 村田 伸, 村田 潤, 宮崎 純弥, 大田尾 浩, 溝田 勝彦, 堀川 悦夫
    原稿種別: 原著
    2011 年14 巻2 号 p. 34-40
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,客観的な体幹屈曲筋力指標として最大呼気口腔内圧(Maximum Expiratory Pressure;MEP)が活用可能であるか否かを検討することである.対象は,地域在住高齢者235 人(男性46 人,女性189 人)とした.主要測定項目は,MEP 評価,上体起こし回数評価とし,関連測定項目は,最大吸気口腔内圧評価,呼吸機能検査,肢体筋力評価,歩行能力評価,主観的生活観評価,活動能力評価とした.MEPと上体起こし回数に有意な相関が認められた.MEP の低値群と高値群の2 群間の比較では,上体起こし回数,握力,大腿四頭筋,足把持力,10m 障害歩行,timed up and go test,最大歩行速度,6 分間歩行距離,活動能力において,高値群のほうが有意に良好な結果が得られた.MEP の影響要因の強さは,上体起こし回数がオッズ比1.13 と有意であった.MEP は客観的な体幹屈曲筋筋力指標として活用できる可能性が示唆された.

研究
  • 森垣 こずえ
    原稿種別: 研究
    2011 年14 巻2 号 p. 41-49
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,糖尿病高齢者が在宅で行うインスリン自己注射の実際を明らかにすることである.

    在宅サービスを受けている高齢者11 人と援助者を対象に,参加観察によるデータ収集を行い,その経過をオレムの看護システムを参考に,自己注射の自立度の視点で分類した.結果,身体的障害はあるが認知機能障害はない【自立型】,認知機能障害があり注射を忘れる【一部代行型:認知機能障害】,合併症が進行し体調不良に陥り自己注射が困難となる【一部代行型:身体不安定】,心身の障害が重く他者に注射を依頼している【代行型】,4 つの型に分かれ,それぞれ看護師,ケアマネジャー,ヘルパー等による特徴的な援助がみられた.自立型から代行型へ向かうと予測されるセルフケアを少しでも長く維持するためには,ケアマネジャーや訪問看護師が,セルフケアの変化を予測し,タイミングを見計らいながら援助を投入することが重要といえる.

  • 黒臼 恵子
    原稿種別: 研究
    2011 年14 巻2 号 p. 50-57
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    訪問看護ステーションに勤務する看護職のワーク・コミットメント(work commitment)の関連要因を検証するため「HRM チェックリスト」を活用し,属性との関連を検証した.対象は,関東圏44 施設の212 人で177 人から回答が得られた(回収率83.5%).分析の結果,①ワーク・コミットメントと関連のみられた属性は年齢,職位,就業形態の3 項目であった.また,これらの3 属性は仕事外生活と関連がみられた.②年齢では,50 歳以上の職員は50 歳未満に比べ,組織コミットメントの「残留・意欲」が有意に高く,また,40 歳未満は50 歳以上より「規範的」が有意に高かった.③職位では,管理者・主任は一般職員に比べ,ワーク・コミットメントおよび職務満足感共に有意に高い項目が多く,組織コミットメントの「情緒的」と「存続的」,キャリアコミットメントの二重コミットメントを確認できた.④就業形態では,常勤職員は非常勤職員に比べ,職務コミットメントが有意に高く,訪問看護の職務に強く同一化していた.

  • 小野 若菜子
    原稿種別: 研究
    2011 年14 巻2 号 p. 58-65
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,訪問看護ステーションにおける家族介護者へのグリーフケアがどのように行われているかといった実施状況と今後の課題を明らかにすることを目的とし,質問紙を作成し,全国の訪問看護ステーションの管理者への郵送による自記式質問紙調査を実施した.

    有効回答は332(90.7%)であった.看取り後のグリーフケアが業務として位置づけられている訪問看護ステーションは149(44.9%)と半数弱であり,そのうち,自宅訪問を実施している訪問看護ステーションが147(98.7%)と全数近くを占めていた.また,管理者の8 割以上がグリーフケアの必要性を感じているにもかかわらず,時間不足,人員不足や採算,グリーフケアの方法の不明瞭さ,グリーフケアの地域のサポート体制の未確立といった多岐にわたる実施上の課題を挙げた.

    訪問看護ステーションが行うグリーフケアは,自宅訪問により,主に1 対1 で行われるケアであり,家族の個別性を尊重できるというメリットがあるが,提供のためには,時間や移動が必要であり,看護師の労力が大きいことが考えられた.

  • 平野 美千代, 佐伯 和子, 河原 加代子
    原稿種別: 研究
    2011 年14 巻2 号 p. 66-75
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究は,介護保険の要支援認定を受けた独居の前期高齢女性の社会活動を明らかにすることを目的に,対象者6 人に面接を実施した.質的記述的に分析を行い15 個のカテゴリーを抽出し,カテゴリー間の関係性を検討した.結果,“自分のペースを主にした可能な範囲での周囲とのかかわり” “負担をかけず体調に合わせた自宅内での自立した生活” “明確な目的をもった意味を有する外出” の3 つの中核カテゴリーを抽出した.要支援にある独居の前期高齢女性の社会活動は,地域社会のなかで役割を担い積極的に活動していくものではなく,自宅外での活動は目的が明確となった必要性の高いもの,自宅内では身体・認知機能を生かした主体的な活動であると考えられた.今後の支援として,他者との交流は間隔が開いても途絶えさせないことや,サービス提供者による生活に密着した支援,ならびに社会活動への意図的な働きかけの必要性が示唆された.

  • 藤川 あや, 小林 恵子, 平澤 則子, 飯吉 令枝
    原稿種別: 研究
    2011 年14 巻2 号 p. 76-86
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,訪問看護ステーションの24 時間対応体制,主治医との連携,在宅ケア関連職種との連携,患者や家族との在宅看取りの意思の確認と,在宅での看取りとの関連を明らかにし,在宅での看取りを可能にするための訪問看護ステーションの医療連携体制を検討することである.8 都道府県の訪問看護ステーション1,590 か所の管理者を対象に郵送法による無記名自記式質問紙調査を実施し,その結果を分析した.

    在宅死亡率の高い訪問看護ステーションは,24 時間の在宅医療体制で支援しており,営業時間外緊急訪問看護,在宅療養支援診療所との連携を行っていた.さらに,麻薬の使用や在宅皮下注入法によって症状のコントロールを実施して患者の症状の変化や家族の不安に対応していた.在宅での看取りを実現するために,訪問看護師は医療機関と連携し,患者の経過を見通したケアと家族が安心して看取るための教育等の質の高いケアを提供する必要性が示唆された.

  • 佐藤 敏子
    原稿種別: 研究
    2011 年14 巻2 号 p. 87-94
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,在宅認知症高齢者への介護家族の言葉かけの実態およびその関連要因について,介護家族の続柄別に明らかにすることである.

    北関東地方2 市に所在する通所サービスを利用している介護家族593 人に自記式質問用紙による留置法で実施し,有効回答251 人(有効回答率42.3%)を分析した.言葉かけは第1 因子「生活行動自立促進」,第2 因子「情緒的交流」で構成される.クロンバックのα係数は,各「.796」「.705」と信頼性が得られた.言葉かけ得点は妻が高く,とくに第2 因子は夫,息子,子どもの妻との間に有意な差がみられた(p < 0.01).また言葉かけの関連要因も続柄により異なることが明らかになった.

    以上より介護家族の支援において,続柄を考慮することで,画一的でない効果的な介入が可能になることが示唆された.

資料
  • 紀 和江, 河野 あゆみ, 金谷 志子
    原稿種別: 資料
    2011 年14 巻2 号 p. 95-103
    発行日: 2011年
    公開日: 2025/03/31
    ジャーナル フリー

    本研究では,在宅介護事件の状況や介護者・被介護者の基本的属性を,心中事件と殺人事件および都市と地方の地域特性を比較検討することを目的とした.方法は,過去10 年間の朝日新聞記事から,被介護者が65歳以上の高齢者である介護事件に絞り,最終的に224 件を分析対象とした.事件の時期や場所,介護者と被介護者の年齢および性別,家族関係などを調査し,心中と殺人事件および都市と地方の介護事件の地域特性を比較検討した.その結果,心中と殺人事件は有意な関連はなく介護事件として扱った.都市の事件は43.8%で,地方の事件は56.3%であった.都市は夫婦間の事件が60.6%に対し,地方は親子間の事件が52.5%で,地域特性と家族関係に有意な関連がみられた(p = .0019).全国の都市の割合に比べて,報道された介護事件は都市が多いことが示され,都市は夫婦間,地方は親子間が介護事件に発展しやすいことが明らかになった.

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