2012 年 16 巻 1 号 p. 44-50
本研究は,在宅高齢者522人を対象に,運動器不安定症に該当する高齢者146人(男性14人,女性132人,平均年齢78.0±5.6歳)と該当しない高齢者376人(男性90人,女性286人,平均年齢71.2±7.0歳)の身体・認知・心理機能を比較検討し,高齢者が健康寿命を延伸できるよう効果的な在宅ケアを行うための基礎的な研究を行った.比較した身体機能は,歩行能力(歩行速度,10m障害物歩行時間)と筋力(握力,大腿四頭筋筋力),認知機能は,Mini-Mental State Examination(MMSE)とTrail Making Test(TMT),心理機能は主観的健康感,生活満足度ならびに生きがい感とした.その結果,運動器不安定症に該当する高齢者は有意に年齢が高く,女性が有意に多かった.年齢と性を調整した共分散分析で比較すると,有意差が認められたのは歩行能力(歩行速度,10m障害物歩行時間)と心理機能のうち主観的健康感のみであり,その他の項目には有意差は認められなかった.これらの知見から,運動器不安定症に該当する高齢者は,歩行能力の低下と自分の健康に不安を感じていることが特徴として明らかとなった.