2015 年 19 巻 1 号 p. 74-81
本研究の目的は,医療的ケアの必要な要介護者が自分自身を取り巻く生活環境を踏まえて,災害の備えをどのように認識しているのかを明らかにすることである.研究デザインは,半構成面接法による質的帰納的方法である.対象者は,A 県介護支援専門員連絡協議会から候補となる対象者の紹介を受けた医療的ケアの必要な要介護者10 人である.その結果,医療的ケアの必要な要介護者の自分自身を取り巻く環境を踏まえた災害に対する備えの認識には,【安全に避難することへの限界】【安心が得られる条件への焦点化】【自分を取り巻く人に頼ることで得られる安心】【近所の人を頼りにできないことから生じるあきらめ】の4 のカテゴリーと11 のサブカテゴリーがあった.結論として,物的環境から限界を認識する一方で,安心が得られる条件の焦点化を行っていた.また,他者へ頼ることで安心を得ようとする一方で,頼りにできないあきらめを認識していた.