2020 年 23 巻 2 号 p. 73-79
本研究の目的は,認知症の人の生活における安心の概念を明らかにすることである.和文献は,「認知症」「安心」をキーワードとし,2 つのデータベースを用いて抽出された16 文献を対象とした.英文献は「dementia」「comfort」をキーワードとし,3 つのデータベースを用いて抽出された10 文献を対象としてRodgers らの手法を用いて概念分析を行った.その結果,6 属性【欲求の充足が保障される】【だれかが私のことをわかってくれている】【心の乱れがない】【心がなごむ】【慣れ親しんだ場に生きる】【平静でいられる暮らし】と,2先行要件,2 帰結が抽出された.認知症の人にとっての生活における安心とは,主観的な要素を含む安心を理解するために他者による集約的な個人の理解があり,支援を得ることで獲得できる平静な状態であることが明らかになった.そして,安心を獲得することで,自身の自律性や日常生活を取り戻すことが可能になると示唆された.