日本在宅ケア学会誌
Online ISSN : 2758-9404
Print ISSN : 1346-9649
23 巻, 2 号
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目次
巻頭言
第24回日本在宅ケア学会学術集会
学術集会長講演
特別講演 「自分らしく生きる」を支えるケア;臨床死生学の視点から
シンポジウム 人口減少地域での看取りをどう支えるか
連載:在宅ケアの研究力を高める
原著
  • 高田 恵子, 石原 多佳子
    原稿種別: 原著
    2020 年 23 巻 2 号 p. 45-54
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,訪問看護師の職場継続意思に関連する要因を明らかにすることである.東海地方の訪問看護ステーションに1 年以上所属する管理者以外の訪問看護師726 人に郵送法無記名自記式質問紙調査を実施した.分析対象は389 人(有効回答率53.6%)である.職場継続意思と職場環境,職務内容,待遇等との関連を重回帰分析で検討した.関連項目は「仕事への肯定的認識」(p < 0.001),「上司との関係」(p < 0.001),「訪問看護師としての能力を発揮しているという‘やりがい’」(p = 0.001),「訪問看護で行う判断の負担感」(p < 0.05)であった.訪問看護が役立っているという意識や専門職としての自覚は,訪問看護師の働く意欲となっていた.一方で,訪問中に判断を求められることに対し負担感を感じていた.負担感を軽減し,意欲をもち継続して働くには,職場の上司から適切な指導や承認を得られることが重要であると示唆された.

研究
  • 岩﨑 弓子, 小玉 淑巨, 西岡 真実, 加藤 里沙子, 深堀 浩樹
    原稿種別: 研究
    2020 年 23 巻 2 号 p. 55-62
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:訪問看護師が経験した利用者の社会保障制度の活用を支援するうえでの問題を明らかにする.

    方法:内容分析を用いた質的記述的研究である.社会保障制度の理解不足が利用者のケアに影響した事例などについて,訪問看護経験6 か月〜5 年の12 人の看護師に半構造化面接を行った.

    結果:【入職後早期には基本的な制度に関する知識がわからない】【利用者の生活を支える制度の全体像が把握できない】【制度の活用を支援して利用者の生活を適切にマネジメントできない】【リアルタイムに必要な情報を得ることができない】【主体的に学習に取り組むことが難しい】の5 カテゴリーが抽出された.

    結論:訪問看護師の利用者の社会保障制度の活用を支援する能力を向上させるには,入職後早期に利用者のケアと社会保障制度の知識を関連づける教育の提供,事業所内で指導や助言を得られる環境の整備,事業所内外の段階的・体系的な教育の構築が効果的と考えられた.

  • 山本 なつ紀, 成瀬 昂, 藤﨑 万裕, 松本 博成, 永田 智子
    原稿種別: 研究
    2020 年 23 巻 2 号 p. 63-72
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    目的:訪問看護師がどのような出来事を,「利用者の安全にかかわる出来事(patient safety incidents;PSI)」と認識し,訪問看護ステーション(ST)へ報告しているかを明らかにする.

    方法:関東圏内の訪問看護師15 人を対象とし,半構造化面接による質的記述的研究を実施した.

    結果:【利用者の状態に直接的な害となること】または【利用者の状態に直接的な害となる可能性があること】が発生した場合,それをPSI と認識していた.訪問看護師がPSI と認識した事例は,《事故》《インシデント》《事故・インシデントではないPSI》の3 つの形態のいずれかで報告され,報告形態の選択には,PSI の〈行為者〉〈発生場面〉〈起きた内容の重大性〉〈影響の重大性〉〈発生回避の障壁〉の5 つの視点が考慮されていた.

    結論:訪問看護領域でのPSI の情報を標準化して集積するには,3 つの形態による分類が必要であり,5 つの視点がその分類基準となる可能性がある.

資料
  • 鈴木 千枝, 谷垣 靜子
    原稿種別: 資料
    2020 年 23 巻 2 号 p. 73-79
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    本研究の目的は,認知症の人の生活における安心の概念を明らかにすることである.和文献は,「認知症」「安心」をキーワードとし,2 つのデータベースを用いて抽出された16 文献を対象とした.英文献は「dementia」「comfort」をキーワードとし,3 つのデータベースを用いて抽出された10 文献を対象としてRodgers らの手法を用いて概念分析を行った.その結果,6 属性【欲求の充足が保障される】【だれかが私のことをわかってくれている】【心の乱れがない】【心がなごむ】【慣れ親しんだ場に生きる】【平静でいられる暮らし】と,2先行要件,2 帰結が抽出された.認知症の人にとっての生活における安心とは,主観的な要素を含む安心を理解するために他者による集約的な個人の理解があり,支援を得ることで獲得できる平静な状態であることが明らかになった.そして,安心を獲得することで,自身の自律性や日常生活を取り戻すことが可能になると示唆された.

  • 小林 澄子, 堀口 和子, 岩田 昇
    原稿種別: 資料
    2020 年 23 巻 2 号 p. 80-88
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    最期まで自宅ですごすことを希望した独居高齢者のエンド・オブ・ライフに影響する,訪問看護師の支援を探索することを目的に,独居高齢者が亡くなるまで/自宅療養を断念するまでの,1 週間の身体的・心理的状態,訪問看護師からの独居高齢者および別居家族への支援,多職種連携などについて,訪問看護師を対象に自記式質問紙調査を実施した.自宅で最期を迎えた独居高齢者(完遂群)と自宅療養を断念した独居高齢者(断念群)を2 群間で比較・検討した.完遂群78 部・断念群77 部(回収率59%・55%)の回答を得た.多変量解析の結果,完遂群では,独居高齢者の死の過程に対する説明を別居家族に行っていること(別居家族への支援),多職種との役割分担を確認していること(多職種連携・支援),全体として独居高齢者が望む生活が送れていたこと(独居高齢者への支援)の3 つが関連していた.

  • 古瀬 みどり, 東海林 美幸
    原稿種別: 資料
    2020 年 23 巻 2 号 p. 89-95
    発行日: 2020年
    公開日: 2024/12/06
    ジャーナル フリー

    訪問看護師が利用者のACP に携わり,よかったと感じた事例と困難と感じた事例を分析することで,在宅ケア領域におけるACP 実践の概要を明らかにする.対象者は全国の訪問看護事業所1,100 件に勤務する看護師で,郵送法による質問紙調査を実施した.ACP をよかったと感じた事例は,がん終末期が半数以上であった.また80%以上が今後どのような生活を送りたいか,最期をどこでどのようにすごしたいかを話し合っていた.ACP を困難と感じた事例は非がん疾患が半数以上で,利用者本人・同居の家族のACP 参加率が低かった.ACP をよかったと感じた理由は,利用者や家族の思いを聞き希望に沿うケアを提供できた,利用者が最期を家族とすごせた,家族・遺族から感謝の言葉があったが多く挙げられた.一方,ACP を困難と感じた理由は,利用者の思いを聞くのが難しかった,利用者と家族もしくは家族間の意向が食い違っていたが多かった.

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