日本健康相談活動学会誌
Online ISSN : 2436-1038
Print ISSN : 1882-3807
原著論文
小児期に腎疾患を発症し腎移植を受けた患者が体験していることの意味
―病いを抱えながら成長していく子どもたち―
岩井 晶子
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2013 年 8 巻 1 号 p. 28-43

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抄録

 研究目的:小児期に腎疾患を発症し透析を経て腎移植を受けた患者が体験していることの意味を明らかにすること。対象:小児期に腎疾患を発症し、その後腎移植を受けた16歳以上の患者。研究方法:質的記述的研究で、データ収集方法は半構造化面接法である。結果および考察:研究参加者は、小学生・中学生の頃は病気や治療について十分な説明を受けないまま、周囲の大人の指示に従い、腎臓が悪いと漠然と捉えていた。また激しい痛みや厳しい食事制限など困難な状況にひたすら耐え、そして慣れるというように、柔軟に適応しながらその困難を乗り越えていく「しなやかな強さ」を発揮していることが明らかになった。高校以降になると、学校生活や進路選択において、病いを抱えていることが重荷となり、特に透析をしていることが、学校でのいじめや進路選択の幅を狭めるものとして、新たな問題を生み出していた。しかし腎移植を受けることで、進路選択など将来の可能性が拡がり、積極的な生き方へと変化し、人として成長していく過程が明らかになった。人が病むという経験を単に負の側面からみるのではなく、むしろそれが人間の変容と成長を促す大きな源となっていることが明らかとなった。入院期間が短縮されるなか、子どもたちは治療を継続しながら学校へと復帰するため、医師や看護師、養護教諭、教員はその事実を認識し、そのような力が発揮されるよう連携しサポートする必要がある。

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© 2013 日本健康相談活動学会
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