日本ヒューマンケア科学会誌
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Print ISSN : 1882-6962
事例報告
断酒会でリーダーシップをとっているアルコール依存症者は断酒会との出会いを通してどのように変化してきたか
-ナラティヴ分析による試み-
三澤 瑚子岩渕 勝之石田 賢哉
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2020 年 13 巻 2 号 p. 20-31

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抄録

 本研究は、ナラティヴ分析の枠組みを用いて、現在断酒を継続しながらリーダーシップをとっている当事者を対象に、断酒会に出会うまでの人生、断酒会に出会ってからの人生への振り返りを通じて、過去の酒害体験や断酒会への思い、今後の人生の意味付けがどのように変化したか検証するものである。対象者は断酒歴10年以上のアルコール依存症当事者であり、現在は断酒会会長や全日本断酒連盟の県の代表をつとめている。

 「アルコール依存症の経験」では、依存症になったきっかけやスリップ体験、飲酒を継続する意思や依存症に対する否認が当時の思いを振り返る形で語られていた。「断酒会につながった結果」では、断酒会の入会当初は断酒会に対して否定的だったり必要性が分からなかったりしていたが、参加していく中で個々人が様々な気づきを得ることで、否認が解消され印象が前向きなものへと変化していた。「今後の人生の意味付け」では、依存症の経験の中で見られていた希死念慮や自殺企図、生きることに対する虚しさ等が、それらを乗り越えたことで変化し、それぞれのやり方で断酒会に関わっていくことや、個人的な人生の目標について語られていた。

 断酒会との出会いが即行動や意識の変化につながるのではなく、葛藤や不信感など揺れ動く気持ちがある中で継続してつながり続けることで、考えや行動に変化が生まれるといえる。

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© 2020 日本ヒューマンケア科学学会
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