2015 年 8 巻 1 号 p. 11-26
本研究の目的は、脳死ドナー家族のケアに焦点を当てて、脳死ドナーをケアする看護師の経験の構造を明らかにすることである。対象は脳死ドナーケアの経験がある看護師7名である。半構成的面接により得られたデータはグラウンデッド・セオリー・アプローチを用いて分析した。その結果、経験のコアカテゴリーとして、11のカテゴリーと22のラベルから成る<ケアヘの不確かさと揺らぎに挑む>が抽出された。脳死ドナーをケアする看護師の経験の中核となるものは、ドナ一家族との相互作用を通してあるいは看護師自身の内面で生じるケアヘの不確かさと揺らぎを前提として、それによって生じる認知的不協和を低減しようと能動的に挑戦することである。この経験は、《経験的学習》と《ケアヘの実存的価値づけ》のプロセスから成り、これらの過程を経て獲得した【経験からの学習】と、見出した【ケアの実存的価値づけ】がきっかけとなり、【脳死ドナーケアの発動力の進展】へとケアが発展する。