日本助産学会誌
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20周年記念論文
死産で子どもを亡くした母親たちの視点から見たケア・ニーズ
太田 尚子
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2006 年 20 巻 1 号 p. 1_16-1_25

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抄録

目 的
死産で子どもを亡くした母親たちのケアへのニーズと,その背景となっている思いや体験を探索する。
対象と方法
研究デザインは,質的因子探索型研究である。妊娠中期以降に,死産を経験した母親13名と早期新生児死亡を経験した母親1名の計14名を対象に,半構成的面接法によりデータを収集し,継続的に比較分析した。
結 果
母親たちのケア・ニーズには,妊娠中に築かれた子どもとの絆を確認し,母親であると自覚できることを支援する『母親になることを支える』,子どもの死亡という喪失体験が引き起こす悲嘆過程を促すことを支援する『悲嘆作業を進めることを支える』,そして,ケアに関するあらゆる場面で,母親たちの意思を尊重し,母親主導でケアを展開する『希望を引き出して意思決定を支える』があった。『母親になることを支える』の構成要素として,《希望するだけ子どもに会うこと・別れることを支える》,《生きた証を残す思い出づくり》,《火葬と供養を支える》,《子どもが生きているかのような扱い》の4つのカテゴリが抽出された。また,『悲嘆作業を進めることを支える』には,《子どもや出来事の話の引き出しと傾聴》,《泣いていいことの保証と泣ける環境》,《心の痛みを助長させない環境》,《退院後の心のサポートと情報の提供》,《母親を支援できるように家族を支える》の5つのカテゴリが抽出された。
結 論
母親たちのケア・ニーズには,母親になることへの支援,悲嘆作業を進めることへの支援,そして,あらゆるケア場面での意思決定への支援があった。

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© 2006 日本助産学会
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