日本助産学会誌
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原著
羊水検査を受けることについての女性の価値体系
小笹 由香松岡 恵
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2006 年 20 巻 1 号 p. 1_37-1_47

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抄録

目 的
羊水検査を受ける女性の意思決定に影響を及ぼした価値判断とその根底にある価値体系(慣例規範・維持欲求,期待規範・適応欲求,統合規範・調和欲求の3段階)を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
対象は,羊水検査の結果に異常がなかった女性16名で,研究デザインはインタビューガイドに基づく半構成面接による,質的後方視的記述研究とした。
結 果
義兄がダウン症であるもの以外の15名は,35歳以上であった。慣例規範・維持欲求の低次の段階を優先していた者は16名中12名だった。慣例規範は,精神的に弱く,高齢のため一生介護責任は持てず,障害児の養育は困難というもので,維持欲求は安定した生活の維持というものだった。夫婦の慣例規範・維持欲求の相違がある場合は,夫の期待に応え,受け入れられるという期待規範・適応欲求が得られず,心理的葛藤が起こっていた。また,羊水検査の受否を決めた,同じ立場の女性が,何を悩み,どう判断したかを知ることにより,自分の決定した行動を正当化し,心に調和を感じていたいという,統合規範・調和欲求があった。
結 論
羊水検査を受けることについての価値体系には,慣例規範・維持欲求,期待規範・適応欲求,統合規範・調和欲求の3段階があった。本研究の対象の多くは,十分に考慮できずに低次の慣例規範・維持欲求を優先させ,検査を受ける価値について判断していた。

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© 2006 日本助産学会
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