抄録
目 的
本研究は骨盤底筋訓練を開始する前の腹圧性尿失禁者の骨盤底の形態学的特徴をシネMRI画像により明らかにすることを目的とする。
対象および方法
公募により研究に同意が得られた応募者34名を対象とした。腹圧性尿失禁の鑑別診断には,国際尿禁制学会のパッドテスト及び日本医大方式の簡易診断法を用い,正常群18名と腹圧性尿失禁群(以下失禁群とする)16名を分類した。正常群と失禁群について,シネMRI画像による膀胱頸部の可動性は,弛緩時の膀胱頸部を基準として腹圧負荷時や骨盤底筋収縮時等の動作毎に膀胱頸部の距離変化を測定し,比較検討した。
結 果
対象者はすべて腹圧性尿失禁であり,重症度はきわめて軽度から中等度であった。シネMRI画像による膀胱頸部の可動性は,腹圧負荷時と骨盤底筋収縮下腹圧負荷時において失禁群の方が有意に大きかった。背景要因についてみると失禁群の出生児体重は有意に大きかった。その他の要因である平均年齢,職業,BMI,出産回数等については差がなかった。
結 論
女性の軽度の腹圧性尿失禁者について,腹圧負荷時の膀胱頸部の可動性が大きい。さらに,骨盤底筋収縮下に腹圧を加えると骨盤底筋群による膀胱頸部を支持する力が弱いことが明らかになった。背景要因については出生児体重にのみ有意差を認めたが,その他の要因には差がなかった。