日本助産学会誌
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総説
Perinatal loss(ペリネイタル・ロス)の概念分析
岡永 真由美横尾 京子中込 さと子
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2009 年 23 巻 2 号 p. 164-170

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抄録

目 的
 本研究はPerinatal Loss(ペリネイタル・ロス)の概念を明らかにし,周産期に子どもを亡くす体験をした女性や家族に,助産実践においてこの概念の適用することの可能性を検討する。
方 法
 看護学,医学,心理社会学分野の論文を中心に検索し,Rodgers(2000)の概念分析アプローチを参考とし,属性,先行要件,帰結に関する記述の内容分析を行った。
結 果
 Perinatal loss(ペリネイタル・ロス)は,1)元気な子どもを産めない,2)親であるという認識,3)夫婦や家族の気持ちに気づく,の3つの属性,流産・死産・新生児死亡で子どもを亡くす,という先行要件を抽出した。帰結は,通常の悲嘆と長引く悲嘆に分類できた。通常の悲嘆の帰結には1)コントロール感を取り戻す,2)亡くした子どもと共に生きる,3)夫婦や家族のきずなを深める,の3つを抽出し,長引く悲嘆の帰結には,夫婦関係の悪化を抽出した。Perinatal loss (ペリネイタル・ロス)の定義は,流産・死産・新生児死亡で子どもを亡くした両親が,「元気な子どもを産めない事実に直面する一方で,親であるという認識と同時に,夫婦や家族の気持ちに気づく」ことである。
結 論
 概念分析結果より,Perinatal loss(ペリネイタル・ロス)を体験した女性や家族が,夫婦それぞれのコントロール感を取り戻すことで,亡くした子どもと共に生き,夫婦や家族のきずなを深められることが望ましい。また夫婦関係の悪化とはどのような状況を示すのかを情報提供することで,通常の悲嘆へと促すことができる。悲しみと共に日常生活を営む夫婦や家族の理解を深めるための丹念な記述の蓄積により,この概念のさらなる発展が期待できる。周産期看護の対象となる女性や家族にとって周産期の喪失とは何かを問い続けることは,わが国の文化的背景に沿ったペリネイタル・ロス・ケアの発展への礎となる。本概念は,ペリネイタル・ロス・ケアの実践ならびに,教育や研究への適用が可能であると考える。

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© 2009 日本助産学会
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