日本助産学会誌
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原著
出生前診断で胎児異常の診断を受けた母親に関わった助産師の体験
—倫理的ジレンマの構造—
渋谷 えみ
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2012 年 26 巻 1 号 p. 16-27

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抄録
目 的
 出生前診断で胎児異常の診断を受けた母親に関わった助産師の体験から,倫理的ジレンマの構造を明らかにする。
対象と方法
 倫理的配慮を行った上で,上記の体験を有する助産師8名に非構造化面接を行い「思い・感じ方・考え・考え方」の感情部分を抽出し,質的帰納的に分析した。
結 果
 23の概念,6つのカテゴリーが抽出された。助産師は母親との関わりの中で,医療者間の板ばさみや,介入が困難な生殖医療を実感し【組織における助産師の立場を再確認】していた。さらに,経験の浅い助産師にとっては援助に自信が持てない上に自らの価値観,倫理観と対峙することになり【プライマリとして関わることの辛さ・困難さ】から,時には看護の限界も感じていた。しかし,人材不足や体制の問題による負担を抱えながらも【母親と親密に関わることのやりがい・充実感】が支えとなり,妊娠期からの関わりに意味を見出していた。また,家族のような視点から共感することもあり,感情レベルで子供の生命力に期待を寄せていた。妊娠期からの時間の共有は【潜在的価値観から障害児と対峙することの困難さ】として自らの価値観と向き合う機会となり,助産師に改めて【出生前診断の意味を考える機会】を与えていた。ジレンマを感じながらも母親との時間の共有は助産師としてのあり方を模索する機会となり【子供の死を共有しながら続く関係】の中で助産師としての自分自身を成長させる機会ともなっていた。
結 論
 助産師は母親との関係を深める中で,出生前診断や障害児に対する自己の価値観と対峙する困難さ,そして女性として同性であるがゆえのジェンダー役割期待に関連したジレンマを体験していた。頼られる存在として得られる満足感から多忙業務を招き,ジレンマやバーンアウトに陥りやすい環境を自ら作り上げていた。また,生と死が隣接した生殖医療の職場環境では,感情規制を働かせ,倫理的感受性の閾値を自ら下げることが自己防衛の手段となっていた。しかし,これらの助産師が体験しているジレンマは組織の中では一個人の問題として対処されており,臨床でしか経験できない倫理課題については検討する場もなく悪循環を引き起こしていた。
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© 2012 日本助産学会
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