日本助産学会誌
Online ISSN : 1882-4307
Print ISSN : 0917-6357
ISSN-L : 0917-6357
原著
ドメスティック・バイオレンス被害女性の回復を促す周産期の助産ケア
藤田 景子
著者情報
ジャーナル フリー

2013 年 27 巻 2 号 p. 247-256

詳細
抄録

目 的
 本研究は,DV被害女性と看護者の2者の視点から周産期及び育児期におけるDV被害女性の回復を促す助産ケアの要素を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
 質的記述的研究デザインを用いた。研究協力者は(1)妊娠前からDV被害を受けており産科を受診した経験のあるDV被害女性21名と,(1)のDV被害女性に良い変化を及ぼした看護者10名である。インタビューガイドを用いた半構成インタビューを行い,データを質的に分析した。
結 果
 DV被害女性の被害に対する認識に良い変化を及ぼした看護者の関わりは〈女性と子どもの安全・安心を守る関わり〉,〈女性が自分らしさを取り戻す関わり〉,〈母親としての自己意識を促す関わり〉が抽出され,コアカテゴリーとして他者と《つながる関係の形成》が明らかになった。〈女性と子どもの安全・安心を守る関わり〉は,看護者が〔女性が安全と感じる関係を築きながらDVのアセスメントと情報提供を行う〕,〔女性と子どもの安全かつ安心の場を作る〕ことにより,女性は看護者を自分のことをわかってくれる人と感じていた。〈女性が自分らしさを取り戻す関わり〉は,看護者は女性が〔自分の存在に意識が向くように促す〕,〔ありのままの「あなた」の存在を肯定する〕,〔一人ではないと感じるつながり続ける関係を作る〕ことで,女性は自分の存在が受け入れられていると感じていた。〈母親としての自己意識を促す関わり〉は,看護者が〔女性自身が命を生み出す主体であることを感じてもらう〕,〔女性自身が子どもを「育てる」力のある存在であることを感じてもらう〕ことで,女性が家を出る力となっていた。
結 論
 パートナーから暴力を受け孤立していたDV被害女性は,看護者との《つながる関係の形成》の過程で,大切にされる自分の存在を知覚し他者への信頼を取り戻すことで回復に向かっていったと考えられる。よって上記のケアはDV被害からの回復を促す助産ケアの重要な要素であることが示唆された。

著者関連情報
© 2013 日本助産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top