抄録
目 的
妊娠期に長期入院を余儀なくされるハイリスクな状態にある妊婦と夫が,共に親として高め合える支援のあり方を検討するための前段階として,正常な経過をたどる初妊婦とその夫とハイリスクな状態にある初妊婦とその夫を比較し,親準備性の違いや特徴を明らかにすることである。
対象と方法
妊娠22~28週未満,妊娠を受容し,母親・両親学級未受講の20~40歳の妊婦と夫で,両者の第1子妊娠中の正常経過群とハイリスク群(切迫早産,前期破水,頚管無力症,前置胎盤,PIH,FGR,多胎妊娠,既往妊娠の異常を診断名とし,入院後1週間以上経過)それぞれ50組を対象とした。調査には,属性,夫婦の関係性尺度(6項目),胎児愛着尺度(21項目),親になる意識(19項目),親になる自覚およびイメージ(VAS)とそれに関連する自由記述で構成された無記名自記式質問紙を用いた。分析は,SPSS Ver.22を使用し,統計的に比較し,その解釈の裏づけとして自由記述の結果を用いた。
結 果
分析対象は,正常経過群16組(回収率32%),ハイリスク群9組(回収率18%)だった。属性で,質問紙記載時妊娠週数と家族形態に有意差を認めた。夫婦の関係性,胎児愛着は,両群の夫・妊婦間比較で有意差はなかった。しかし,妊婦ではリスクの有無に関係なく夫婦の関係性および胎児愛着と親になる意識の「親になる実感・心の準備」とに強い相関がみられた。親になる意識は,両群の妊婦間比較で「生まれてくる子どもの心配・不安」がハイリスク群で有意に高かった(p=.02)。親になる自覚は,結婚~妊娠までが妊婦間比較でハイリスク群が高く(p=.017),結婚~妊娠までと現在の時間的経過で正常経過群妊婦のみ有意に高まっていた(p=.018)。親になるイメージは,結婚~妊娠までと現在では両群間および時間的経過における両群内のいずれにも有意差はなかったが,妊婦・夫ともにハイリスク群ではイメージが高まらない傾向にあった。
結 論
妊娠期にハイリスクな状態にあることは,親になる意識やイメージに何らかの影響をおよぼすことが考えられた。親になる具体的準備を行う大切な時期でのイメージの阻害は,出産後の親役割や夫婦の関係性のギャップに戸惑う要因ともなり得ることから,夫婦共に親になるイメージが膨らむ介入の検討の必要性が示唆された。