日本助産学会誌
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原著
帝王切開における出産体験のとらえ方尺度の検討
吉本 明子兒玉 慎平中尾 優子
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2017 年 31 巻 1 号 p. 34-43

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抄録

目 的

本研究は,帝王切開における出産体験のとらえ方の構成項目を検討し,尺度の作成を行うことを目的とした。

対象と方法

無記名自記式調査票を4施設にて平成27年3月13日から8月31日までの期間,緊急または予定帝王切開後の褥婦に実施した。調査は留置式調査を用いた。

調査で使用するため,先行研究に基づき26項目から構成される尺度の原案を作成した。尺度原案の項目分析後,主因子法・プロマックス回転による探索的因子分析を行い,因子構造を確認した。本尺度の信頼性の検討として,Cronbachのα係数とIT相関を確認した。また,妥当性の検討として,既知集団妥当性と内容妥当性を確認した。

調査は,鹿児島大学医学部疫学・臨床研究等倫理委員会の承認を得た(受付番号:第327号)。

結 果

調査の結果,134名の有効回答を得た。

尺度原案における項目分析により,3項目を削除した。23項目を使用した因子分析の結果,3因子15項目が抽出された。因子は,第1因子<出産の充足感>,第2因子<手術への適応>,第3因子<産み方への受容>と命名された。第1因子は7項目,第2因子は5項目,第3因子は3項目で構成された。

尺度の信頼性の検討として,Cronbachのα係数は,全体で0.823,各因子で0.636~0.840となった。IT相関では,全ての項目と尺度合計得点との間に有意な相関が示された(p<0.01)。これより,本尺度は十分な信頼性を持つことが確認された。

妥当性において,緊急帝王切開の平均得点が予定帝王切開より有意に低く(p<0.01),先行研究と同様の結果であったことから既知集団妥当性が確認された。また,助産学の専門家による調査票の自由記述の見解と,抽出された因子がほぼ一致(93%)したことから,内容妥当性が確認された。

結 論

本研究で新たに作成された帝王切開における出産体験のとらえ方尺度は,3つの因子から構成され,信頼性と妥当性が確認された。本尺度は,帝王切開の褥婦の出産体験に対する認識を明らかにすることができるといえる。今後,帝王切開の褥婦へのケアの改善に役立てるため,活用されることが期待できる。

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