日本助産学会誌
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総説
「自信」の概念分析:中堅助産師の自信への適用可能性
石川 智恵
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2018 年 32 巻 2 号 p. 85-100

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抄録

目 的

自信の概念を概念分析によって明らかにし,この概念を適用して中堅助産師の自信の構造とその構造を用いた研究の方向性を考察する。

方 法

助産学,看護学,教育学,心理学分野に関する国内外の論文を検索し,Walker & Avant(2008)の方法に沿って概念分析を行った。そして,①自信の概念の用いられ方,②関連する概念,③自信の属性,④自信の概念的定義,⑤モデル例,境界例,相反例,⑥自信の先行要件,帰結,影響因子を明らかにし,この概念を適用して中堅助産師の自信の構造とその構造を用いた研究の方向性,及び今後の課題について考察した。

結 果

自信は,ある特定の行動や能力に対する確信と,自分の価値に対する確信を含む包括的な概念であり,状況や文脈によって変化するという不確実性を持つ。

属性は,①ある特定の行動や能力に対する確信,②自分の価値に対する確信,③不確実性である。先行要件は,ある役割や課題に取り組んでいる中で,それについて周囲から期待を寄せられたり,自分の目標を持つが,同時に周囲の期待に応えたり自分の目標に到達するのに不安を抱く状況である。帰結は,自分の思考や感情が肯定的に変化し,自分の成長を実感し,困難な状況や変革に挑戦できるようになることである。影響因子は,①困難な状況を克服する経験や成功体験を含む経験の内容とその意味づけ,②経験による熟達,③専門的知識と技術の保有,④自らを客観的に評価できる能力,⑤他者期待及び自己期待の充足度,⑥他者からの評価,⑦周囲のサポート,⑧職場等その人を取り巻く環境である。

結 論

自信の概念を適用して中堅助産師の自信の構造を提示することで,今後の研究の方向性として,それを用いて中堅助産師の自信を明らかにするための尺度開発が示唆された。また,自信の不確実性という特性を活かして,自信とそれに影響する因子との関係性を明らかにすることによって,現在の中堅助産師の自信に影響する課題も明らかにすることができる。

今後は,中堅助産師が「自信がない」と語る言葉に込められた意味について明らかにし,中堅助産師に必要な自信について,さらに検討する必要がある。

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