日本助産学会誌
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原著
人工妊娠中絶に対する助産師の態度,認識およびケア時に感じるつらさの実態
日本助産学会SRHR & Abortion Care ワーキンググループ 助産師グループ徳武 千足斎藤 未希河内 浩美杵淵 恵美子大平 光子安藤 布紀子水野 真希中込 さと子
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2025 年 39 巻 1 号 p. 67-78

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抄録

目 的

本研究の目的は,助産師の人工妊娠中絶に対する態度,認識およびケア時に感じるつらさの実態を探索することである。

対象と方法

2022年3月~9月に,全国11都道府県の助産師に対して,対象の背景,人工妊娠中絶ケア経験,架空事例に対する態度,人工妊娠中絶に対する認識やケア時のつらさについて,無記名自記式質問紙を作成し調査した。分析は,χ2検定を用い,有意差を認めた場合には群間比較を行った。

結 果

質問紙は571部回収し,563部を分析対象とした。対象者の年齢は,40代が28.1%,助産師資格取得後年数は21年以上が41.7%と最も多く,分娩介助件数は,201件以上が55.4%と半数以上を占めた。回答時の就業機関は,病院67.5%,診療所14.6%であった。リプロダクティブ・ヘルス/ライツの学習経験は63.1%,人工妊娠中絶ケアの学習経験は74.1%であった。入職1年目から人工妊娠中絶ケアを担当したのは初期中絶が53.6%,中期中絶が36.6%であった。架空事例に対する助産師の態度は,高校生の奔放な性的活動により中絶を繰り返す事例,治療可能な先天奇形が見つかった事例において,女性の決定の受け入れや女性への共感性が低かった。さらに,人工妊娠中絶に対する認識として,「女性の権利/女性と男性両者の権利」が32.5%,「状況によるので何とも言えない」が55.1%であった。また,助産師の96.0%は,人工妊娠中絶ケア時に「つらい」と感じ,その理由は,女性のことを思うつらさが最多で,胎児への思い,助産師自身への思いの順に多かった。

結 論

助産師の人工妊娠中絶に対する態度,認識およびケア時に感じるつらさの実態から,日本の人工妊娠中絶ケアの質向上のために,助産師基礎教育の改善と助産師個人の信条が守られるような研修やサポート環境の充実を図る必要性が示唆された。

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