日本助産学会誌
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産褥早期の女性のストレスと乳房に対する背部温罨法の影響
山下 恵
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2025 年 39 巻 1 号 p. 213-225

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抄録

目 的

背部温罨法が産褥早期における女性のストレスと乳房に及ぼす影響を明らかにする。

対象と方法

対象は,母児ともに妊娠・分娩・産褥経過に明らかに影響を及ぼす異常がなく,経腟分娩をし,産褥0日または産褥1日から母児同室が可能な母乳哺育を希望する初産婦22名とした。産褥1日から産褥4日まで毎日,可能な限り同一時間帯の午前中に1回15分間の背部温罨法を実施した。検体採取等は温罨法前後と午後(15~18時を目安)に行った。ストレスは,唾液検体からコルチゾールとヒトヘルペスウイルス6型・7型(以下,HHV6・HHV7)および「1:不快」から「9:快」までの9段階リッカート尺度(以下,快-不快)を用い,乳房緊満感と乳房痛はVisual Analog Scaleを用いて評価した。

結果・考察

ストレスでは,産褥1~4日のすべての産褥日数で温罨法前と比較して温罨法後に有意に快となった(p<.01)。また,HHV6において産褥1日の温罨法前後にのみ有意差を認め(p=.016),温罨法後にストレスが緩和されたことが示された。しかし,コルチゾールとHHV7,産褥1日の温罨法前後以外のHHV6においては温罨法前後および産褥日数によるに変化(午後値)に有意差を認めず,背部温罨法のストレス緩和効果を明らかにするまでには至らなかった。乳房緊満感および乳房痛では,午後のVAS中央値は産褥日数が経過するにつれて上昇し,乳房緊満感と乳房痛が強くなっていた。しかし,乳房緊満感,乳房痛ともにすべての産褥日数において温罨法前後のVAS中央値に有意差を認めなかったことから,産褥日数による乳房緊満感および乳房痛の増強は生理的な変化であると推察され,背部温罨法は,乳房緊満感と乳房痛に影響を及ぼさないと考えられた。

結 論

産褥早期の褥婦に対する背部温罨法は,乳房緊満感および乳房痛に明らかな影響を及ぼすことなく,対象を快の状態に導くことが示された。

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