2025 年 39 巻 1 号 p. 202-212
目 的
本研究の目的は,病院に勤務する助産師による外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援の実態を明らかにすることである。
対象と方法
病院に勤務する臨床経験年数3年以上の助産師151名を対象に,無記名自記式質問紙調査を実施した。主な質問内容は「外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援の実態」および「外国人褥婦に支援を実施する上で困難に感じた内容」であった。分析では記述統計量の算出を行い,助産師臨床経験年数による比較にはMann-WhitneyのU検定を適用した。本研究は横浜市立大学倫理審査委員会の承認を得て実施した(承認番号F230800033)。
結 果
有効回答のあった126名を分析対象とした(回収率89.4%,有効回答率93.3%)。外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援として,80%以上の助産師が実践していた内容は,「退院後のサポート環境に関する情報収集」,「通訳機・通訳アプリの使用」,「文化・宗教を尊重した授乳指導」等であった。一方,「言語的コミュニケーション」,「家族やキーパーソンを巻き込んだ支援」は,80%以上の助産師が困難に感じていた。さらに臨床経験11年以上の助産師は10年以下の助産師と比べ,「相手の文化・宗教を尊重した清潔ケア」,「相手の文化・宗教を尊重した食事指導」,「母子保健制度利用の確認や知識提供」等の4項目を有意に実践していた。
結 論
助産師による外国人褥婦に対する出産退院後から1ヶ月健診までの生活に向けた支援について,コミュニケーションの工夫や退院後についての情報収集,文化・宗教を尊重した育児指導の内容が多かった一方,困難に感じている助産師も多く,多言語に対応したパンフレット等の活用や対応した外国人褥婦のケア経験を共有する機会を設ける必要性が示唆された。さらに,外国人褥婦に対する助産師全体の支援の質向上のために,助産師臨床経験年数がより長い助産師による支援や経験の共有を行うことの必要性が示唆された。