論文ID: JJAM-2019-0025
目 的
日本助産学会の作成した「エビデンスに基づく助産ガイドライン―妊娠期・分娩期2016」(以下,ガイドライン2016)発刊前に,ガイドライン2016が推奨している妊娠期ケアの方針について調査し,日本の産科医療施設においてどの程度妊娠期のエビデンスに基づくケアが実施されているかを明らかにすることを目的とした。
方 法
全国の産科を標榜する3,164施設を対象として,無記名自記式質問紙を用いた郵送調査またはWeb調査のいずれかにて回答を求めた。質問紙の妊娠期ケアに関する項目は,ガイドラインに推奨が示された11項目であった。調査期間は,2016年11月~12月であった。本研究は,聖路加国際大学研究倫理審査委員会の承認を得て行った(承認番号:16-A062)。
結 果
研究協力施設は計362施設であった(回収率80.4%)。全体として,「葉酸の摂取」(8.3%),「DVスクリーニング」(6.9%),「会陰マッサージ」(10.6%)に関してほぼ全例に実施/勧める施設が特に少なかった。サプリメントの服用に関して,ビタミンサプリメントは勧めない施設が多く(60.1%),反対に鉄剤サプリメントはほぼ全例/ケースにより勧める施設が多かった(66.1%)。マイナートラブルへのセルフケア方法に関しては,「浮腫症状に対する足浴(74.9%)/マッサージ(78.4%)」,「腰痛および骨盤痛に対する運動」(92.5%),「便秘改善のための食物繊維の摂取」(96.1%)は多くの施設においてほぼ全例/ケースにより勧めていた。嗜好品の摂取に関して,「アルコール摂取に関する保健指導」(52.6%)は半数近くの施設でほぼ全例に実施されていたが,「カフェイン摂取に関する保健指導」(29.0%)は3割近くに留まっていた。また,助産師外来の有無に関連して有意差がみられた妊娠期のケアは「会陰マッサージ」(χ2値:8.870,OR:1.385,95%CI:1.129-1.699,p=0.003)であった。
結 論
日本の産科施設における妊娠期のケアにはエビデンスギャップが存在することが示され,ガイドライン2016の周知と妊娠期ケアに関するエビデンス普及の必要性が示唆された。