日本助産学会誌
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分娩期における熟練助産師の実践知 ―痛みに対して強い不安・恐怖感を表出している産婦へのケア―
野島 奈明
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論文ID: JJAM-2019-0039

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抄録

目 的

分娩時の痛みに対して強い不安・恐怖感を表出している産婦へのケアとして,熟練助産師がもつ実践知を明らかにする。

対象と方法

スノーボールサンプリング法でリクルートした熟練助産師13名へ半構造化インタビューを行い,研究参加者が語った事例から,研究目的に合致したケアを記述したものを小テーマとした。それを類似性に沿って統合し,抽象度を高めることを繰り返し,テーマ,大テーマとした。

結 果

研究参加者が語った産婦は,分娩時期に関わらず,叫ぶ,暴れる,体が固くなり間欠期も力を抜けない,反応がない,攻撃的な口調になる,危険行動をするなど,分娩時の痛みに対してさまざまな自己表現をしていた。そのような産婦への熟練助産師の実践知として,【受容的に接する】【自分の存在を産婦に知らせる】【その場の流れに産婦を没頭させない】【産婦の興奮を助長しない】【夫の気持ちを産婦から遠ざけない】【母娘関係を手がかりに,産婦のニードを推察して応える】という大テーマが抽出された。また,研究参加者は,分娩時の痛みに対して強い不安・恐怖感を表出している産婦に対し,〔母親になる過程である分娩中は,子どものように感情を出すものだと捉える〕〔混乱しているようにみえる産婦も,冷静に聞いていると捉える〕という【実践知に伴う基本的姿勢】を基盤にケアしていることが明らかとなった。

結 論

熟練助産師は,母児に危険が及ばない限りはいかなる産婦の自己表現も受容するが,決して産婦の興奮を助長しないようにしていた。また,いつもとは違う妻の姿を見た夫の心情や,産婦と夫との心の距離にも配慮していた。さらに,強い不安・恐怖感を表出しているからこそ,そこには現れていない産婦の真意を見極めようとしていた。その際,産婦と実母の母娘関係が対象を理解する手がかりになることがあった。また,助産師自らの存在感を消さず,主導的に産婦へ関わることが特徴的であった。

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