論文ID: JJAM-2020-0022
目 的
わが国の助産所の熟練助産師が実施している胎児娩出手技と考え方について調査分析し,現在の主な2つの助産学基礎テキストにおける分娩介助時の技術(会陰保護法)と比較検討することを目的とした。
対象と方法
首都圏と近畿圏の助産所管理者25名に調査を依頼し,そのうち8名の熟練助産師が対象となった。著者の先行研究(2018)で明らかにした分娩第2期の胎児娩出手技について,熟練助産師の胎児娩出手技と考え方の実際をファントム使用での動画撮影,ICレコーダーでの録音調査,半構造的面接を依頼した。データ収集期間は2017年7月から8月とし,分析方法は,記述的方法を活用して質的分析を行った。
結 果
8名の熟練助産師が対象となった。児頭娩出時の手技は,第3回旋の抑制も促進も行わず,肩甲娩出時は陣痛を待ち,児が屈位姿勢の小さいままの娩出となるよう両手で児をホールディングして前方にゆっくりと娩出していた。熟練助産師は,児は自然な陣痛によって回旋しながらゆっくりと生まれてくると考えており,会陰保護は実施せず,児娩出時の積極的介入は行っていなかった。
結 論
助産所熟練助産師が実施している胎児娩出手技は,現在の主な2つの助産学基礎テキストにおける分娩介助時の技術(会陰保護法)とは異なる内容であった。児が屈位姿勢を保持できるよう,小さいままでの娩出を実施し,肩甲から躯幹娩出時も,自然な陣痛を待ちゆっくり娩出させることが,分娩外傷予防だけでなく,出生後の児の健康状態促進のために重要と考えていた。