日本助産学会誌
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分娩を取り扱う助産所助産師がとらえる産後ケアと助産所の存在役割
柳瀬 千恵子山田 安希子高橋 由紀
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論文ID: JJAM-2020-0028

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抄録

目 的

分娩を取り扱う助産所助産師が認識している産後ケアとはどのようなものか,地域における助産所の役割をどのように捉えているのかを明らかにすることである。

対象と方法

A県内において,妊娠・分娩・産後ケアを扱う助産所助産師8名を対象とし,産後ケア実践への認識および助産所の存在について,半構造化面接を実施した。得られたデータは質的帰納的に分析した。

結 果

8名の助産所助産師の認識している産後ケアは,【健康な母子・家族を支える関わり】として1コアカテゴリー,≪産後の母親を支援することは不変の関わり≫≪継続的な個別性ある全人的関わり≫≪母親の意思を尊重し母子にとって健康的な授乳方法を支援する≫≪母乳育児を育児の自信や楽しさにつなげる≫≪親子・家族関係を支える≫の5カテゴリーから構成された。地域における助産所の役割は,【切れ目ない子育てを支援する場】として,1コアカテゴリー,≪助産所で出産する母親は健康的で自立している≫≪いつでも誰でも安心して来られる場所≫≪子育てコミュニティの形成≫≪個別的支援≫≪地域における多職種連携≫≪専門職としての発展≫の6カテゴリーから構成された。

結 論

助産所助産師にとって,産後の母親を支援することは必然であり,不変の関わりであることが示唆された。助産所助産師は,現行の産後ケア事業について「一時的なもの」ととらえ,助産師が本来行ってきた母親のニーズに沿った産後ケアとは異なると認識していた。助産所助産師は,産後の関わりにおいては,出産場所に関係なく,母親は妊娠期から出産という一連の流れの中にあることを意識しながら,母子の心身の健康を支援していることが明らかになった。助産所は,助産師の専門性を発揮しうる実践場所であるだけでなく,産後の母子を切れ目なく支援していくことが可能な地域における子育て支援の基盤となりうることが考察された。

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