論文ID: JJAM-2021-0032
目 的
妊婦の歯周病は,早産や低出生体重児の増加と関連があり,妊娠期の口腔衛生行動は重要である。本研究は,COVID-19感染拡大時期を過ごした妊娠中期の妊婦の口腔衛生行動と歯周病自覚症状について明らかにする。
対象と方法
横断的量的記述研究である。対象者は,A病院の妊婦健康診査に通う妊娠中期の妊婦で,調査期間は,2020年6月から2021年5月,データ収集は,診療録とWEB調査である。調査内容は基本属性,妊娠中期の1日の食事回数,COVID-19感染拡大前後の口腔ケア,妊娠中期の1日の歯みがき回数と歯周病自覚症状,妊娠中期までの歯科受診である。
結 果
113名の妊婦から回答を得た。就業している割合は68.1%で,そのうちCOVID-19感染拡大後も勤務先に出勤していた者は94.8%であった。1日の食事回数は4回以上の妊婦は66.3%であった。感染拡大前よりも口腔ケアが増えた妊婦は33.6%であり,そのうち帰宅後,仕事中,歯磨き後のいずれかで水やうがい薬でのうがいの回数が増えた妊婦は86.8%であった。1日の歯みがきの平均回数は2.9±0.8回であったが,間食後に歯磨きを行う者は9.7%であった。妊娠してから妊娠中期までに歯科受診した者は56.6%であったが,その中で歯科受診後も「歯周病自覚症状有り」に該当した妊婦は53.1%いた。
結 論
COVID-19感染拡大時期を過ごした妊娠中期の妊婦の口腔衛生行動は,感染予防のために口腔ケアを行う者が存在した。一方で,間食後の歯みがきを行っていない者がいることがわかった。また,COVID-19感染拡大時期でも高い歯科受診率であったことはCOVID-19終息後の受診率にも期待の余地があると考えられた。妊娠してから妊娠中期までに歯科受診をしていても,その後歯周病自覚症状が有る妊婦が存在したことから妊娠中の定期的な歯科受診の重要性が示唆された。