論文ID: JJAM-2022-0021
目 的
臨床助産師による特定妊婦との関わりの実践は具体的にはいかなるものか,その背景の構造を明らかにし現象学的に記述することである。
対象と方法
研究デザインは現象学的研究である。研究協力者は,臨床経験が10年以上ある助産師で,特定妊婦との関わりが複数回あり,その実践を語ることができることを条件にネットワーク標本抽出法にて抽出した。データ収集は非構造化インタビュー法を用いて実施した。
結 果
研究協力者は30歳代後半の助産師Aさん,病院に勤務して10数年になる。Aさんの語りの構成は,3つのテーマから成り立っていた。【「人をみる」ことへの問い】,「人をみる」ことへの問いの着地点として語られた【母子とその周りもみる】という実践,母子とその周りもみることでみえてきた【「踏み込んで」関わり,地域に「パスする」】という地域連携における実践であった。【母子とその周りもみる】は,次の4つから構成されていた。〔母子とその周りを「いろんな方面から」みる〕,〔妊娠を起点に母親の過去と未来をみる〕,〔「みてもらえてる」と母親が思えるように,母親の話を聞く〕,〔困難を抱える母親の変化を〈強み〉としてみる〕である。地域連携では,〔「踏み込んで」関わる〕,〔地域に「パスする」〕という2つから構成されていた。
結 論
臨床助産師による特定妊婦との関わりの実践では,「人をみること」への問いから,「母子とその周りもみる」という実践と,地域連携における実践の構造が明らかになった。その実践では,助産師の価値観がケアに直結するのではなく,「母子とその周りもみる」ことでケアが決定されていくことが示唆された。また臨床助産師による特定妊婦との関係構築に向けた関わり,特定妊婦が地域社会とつながるための実践が示された。