論文ID: JJAM-2022-0022
目 的
アジア圏出身の外国人女性が,日本での出産において感じた予想と現実体験のギャップの有り様を明らかにする。
方 法
2018年3月20日~7月22日に,過去5年以内に日本で出産したアジア圏出身の外国人女性に半構造化面接を行い,6名の出産体験の語りを質的帰納的方法で分析した。
結 果
アジア圏出身の外国人女性の体験では,予想と現実の3つのギャップが生じていた。出産前の【異文化環境下で出産する心細さ】は,【知ることを通して和らいだ日本の医療への不安】【医療者との意思疎通への自信】へ,さらに【母国と比べた周産期サービスへの満足】となって《日本の医療環境への不明瞭な期待から生じたプラスのギャップ》となった。【外国人に対する医療者の態度への憂慮】は,【醸成された医療者との信頼】へ変わり,《医療者への低い期待から生じたプラスのギャップ》となった。出産前の【自文化(産褥・育児慣習)が普通だとの思い込み】から,産後に【出産時慣習の相違への戸惑い】が生じ,《自文化(産褥・育児慣習)への暗黙の期待から生じたマイナスのギャップ》となった。
結 論
アジア圏出身の外国人女性の日本における出産体験では,日本の医療環境や医療者に対する予想と現実のプラスのギャップと,出産文化に対するマイナスのギャップが生じた。外国人女性の出産に際しては,否定的な予想や暗黙の期待があり,ギャップがもたらされることを前提としたケアの必要がある。医療者は,日本の医療情報の提供や外国人が持つ医療者のイメージを踏まえた働きかけ,出産文化の確認など,ギャップを埋めるための積極的介入を妊娠早期から行う必要がある。