論文ID: JJAM-2022-0051
目 的
本研究は妊娠による姿勢と足部の経時的変化および妊娠期の腰痛との関連を明らかにすることを目的とした。
対象と方法
妊婦14名を対象に,妊娠14週~16週,妊娠24週~26週,妊娠34週~36週の時点で妊娠期の腰痛に関する質問紙調査と測定調査を行った。対象の上前腸骨棘,上後腸骨棘などに球状のマーカーを貼付後,矢状面から立位姿勢をデジタルカメラで撮影し,骨盤傾斜角度を算出した。自在曲線定規を脊柱にあてがって脊柱カーブを採取し,胸椎後彎角度と腰椎前彎角度を算出した。接地足底投影器(Pedoscope)にて足底面の接地状態を撮影,得られた足底接地面に画像処理を施してfootprintを採取し,野田式分類法による形状分類と足底接地面積比率を算出した。足長と舟状骨高を測定してアーチ高率を算出した。各測定項目の経時的変化について統計解析を行い,5%未満を有意水準とした。
結 果
対象は初産9名,経産5名で,妊娠期に腰痛を発症したのは10名であった。妊娠経過に伴って骨盤の前傾,足部アーチの扁平化,腰椎の前彎の減少から増強に転じる傾向にあったが,有意差はなかった。一方,左足底接地面積比率は有意な減少があった(p<0.01)。妊娠期の腰痛の有無別,出産経験別では姿勢および足部の経時的変化は有意差を認めなかった。
結 論
妊婦の姿勢は妊娠経過に伴って骨盤傾斜角度が増強し,腰椎の前彎が妊娠初期から中期にかけて減少し,転じて後期に増強する傾向にあった。また,増大する子宮等の荷重によって足部が扁平化する傾向にあったものの,足部接地面積が広くなっていなかったことから,踵での体重支持によって足趾が浮くような状態になることが推察される。妊娠後期になると荷重が有意に右傾し,姿勢の左右差が大きくなっていた。妊娠期の腰痛の発症には経産婦,足部アーチの扁平化,子宮の増大に腰椎の彎曲のみで対処しているかどうかが関連している可能性がある。