日本助産学会誌
Online ISSN : 1882-4307
Print ISSN : 0917-6357
ISSN-L : 0917-6357
会陰部の損傷による産後の日常生活への支障
会陰裂傷対会陰切開
大久保 功子三橋 恭子斎藤 京子
著者情報
ジャーナル フリー

2000 年 14 巻 1 号 p. 35-44

詳細
抄録

出産時の会陰の損傷が裂傷であったか切開であったかによって, 産後の女性の日常生活に及ぼす支障の長さに差があるのかを明らかにする目的で, 日常生活の側面と心理面に関する独自に開発した半構成的自己記載式質問紙と, 会陰の傷についての自由記載法を用いて, 後方視的に調査し量的および質的に分析した。対象者は経腟分娩をした女性108名のうち, 分析にはまったく損傷がない, 痔核, 血腫があった, 会陰切開のうえに裂けた場合を除いた70名のデータを用いた。
鎮痛剤の使用頻度, 睡眠障害 (p<0.01), シャワー浴入浴での支障 (p<0.05), 外出することへの支障 (p<0.05) において切開群と裂傷群の間に統計学的な有意差が認められ, 切開群のほうが鎮痛剤の使用頻度が高く, 日常生活への支障は長期間に及んでいた。心理面では夫婦生活への恐怖と, 家族に痛みを理解してもらえないことで有意差 (p<0.05) があり, 切開群のほうが裂傷群よりもそれらが強かった。また, 尿失禁に関しては両群間の頻度には差が認められず, むしろ妊娠中からそれを経験していた女性に, 有意 (p<0.001) に尿失禁が頻発する傾向が認められ, 妊娠期からの介入の必要性が示唆された。質的分析からは,「裂傷・切開による障害」,「疹痛の程度」,「医療従事者からの説明」,「解釈」,「意思決定」の5つの側面が浮かび上がった。産後の日常生活の向上には不必要な会陰切開を避け, 効果的な疼痛管理を行うとともに, 女性の出産に対する意思決定を支え, 適切に情報を提供していく必要性が示唆された。

著者関連情報
© 日本助産学会
前の記事 次の記事
feedback
Top