日本助産学会誌
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緊急帝王切開後の女性の急性ストレス反応
出産体験と産褥1週間の体験の分析を通して
横手 直美
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2004 年 18 巻 1 号 p. 37-48

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抄録

目的
緊急帝王切開によって生児を出産した女性が自らの出産体験をトラウマとして認知しているのか, 認知していた場合はどのような急性ストレス反応を示すのかを知ることを目的とした。
対象および方法
民間の産婦人科病院において緊急帝切で生児を出産した女性11名に対し, 半構成的面接2回 (産褥2, 7日) と参加観察, 1か月健診時にも面接を行った。逐語記録とフィールド・ノートから得られた女性の体験に関する記述データをDSM-IVによる急性ストレス障害診断基準 (American Psychiatric Association, 1994/1996) を用いて分析した。さらに, 特にトラウマの再体験を含む急性ストレス反応が認められた女性の出産体験と産褥1週間の体験を記述的に分析した。
結果
11名のうち8名が緊急帝切において何らかのトラウマを有しており, そのうち3名にフラッシュバック, 悪夢, 侵入性想起といったトラウマの再体験を含む急性ストレス反応が認められた。これら3名は, 手術そのものよりも, 出産において自分と子どもの生命や自己の存在を圧倒した強烈な体験をトラウマとして認知していた。しかし, 子どもによる癒し, 母子の順調な経過と適切なケア, 出産体験を第三者に語ることという3つの要因が出産に対する認識の変化を促し, ストレス反応の軽減につながったと考えられた。
結論
以上から, 緊急帝切後の女性の急性ストレス反応を軽減するためにも, 可能な範囲での母子の早期接触, 授乳や養育, 女性が自らの出産体験をとらえ直すことができるようなサポートが重要であることが示唆された。

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