本研究の目的は,睡眠時ブラキシズム(SB)の評価パラメータとして,咬筋筋電図波形積分値の有用性を明らかにすることである.特に,phasic波形とtonic波形の関係に注目し,検討を行った.
対象は,SBおよび 閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS) の疑いにて,終夜睡眠検査を行った患者76名とした.音声ビデオ付き睡眠ポリグラフを用い,咬筋筋電図からphasic波形,tonic波形,および波形の集合体であるエピソードを抽出した.睡眠検査結果によりSB,OSASともに陽性の38名[SB(+)OSAS(+)群],SBのみ陽性の20名[SB(+)OSAS(−)群],および全被験者76名について,波形数と積分値を算出した.
各群の各分類での波形数やエピソード数と標準化積分値間ではいずれも有意な相関を認めたが,分布にはばらつきがあり,相関が強いとは限らなかった.1波形当たりの積分値はtonicがphasicより明らかに大きかった.単位時間当たりでは,tonicよりもphasicの波形数が有意に大きかったが,積分値については,tonicのほうが有意に大きい,あるいは有意差はないが中央値はtonicのほうが大きいという結果であり,波形数のようにphasicの占める割合が優位であるという傾向は示されなかった.
積分値による評価でのphasic波形とtonic波形が占める割合は,波形数による評価とは傾向が異なることが示され,評価パラメータとして,波形数だけでなく積分値も用いることの重要性が示唆された.