2026 年 101 巻 3 号 p. 145-149
Tabularia属珪藻は現在20種が認められており,そのうちT. sinensisは中国の鄱陽湖で初めて記載された.本研究では日本産T. sinensisを走査型電子顕微鏡で再検討し,接殻帯片(valvocopula)の構造に着目した.以前,本研究者らはT. sinensisの接殻帯片が片方開放している(開環型)と報告したが,今回の観察で両端が閉じている(閉環型)ことを確認した.これは従来のTabularia属には見られず,Ulnaria属に特有の特徴である.試料作製時の損傷で開放したように見えたが,詳細な観察により閉じているのが本来の形であると判明した.T. sinensisは形態的に分子系統解析では異なる系統群とされるTabularia属とUlnaria属の中間的特徴を示すことから,複雑な分類学的位置が示された.