2008 年 83 巻 6 号 p. 331-338
小笠原諸島産スゲ属植物の 2 新種, チチジマナキリスゲ Carex chichijimensis Katsuy. とムニンヒョウタンスゲ C. yasuii Katsuy. を正式に記載した. チチジマナキリスゲはナキリスゲ節 (Sect. Graciles Tuck. ex Kük.) に属し, 小笠原固有のムニンナキリスゲに似るが, 果胞が大きく, ほとんど無毛で, 太い脈が多数あることが異なる. ムニンヒョウタンスゲはヌカスゲ節 (sect. Mitratae Kük.) に属し, 長さ4.5 mm 以上の瓢箪型の果胞と, 柄が太く先が円柱状の痩果が, 台湾のヒロハヒョウタンスゲ C. gracilispica Hayata やトックリスゲ C. rhynchachaenium C. B. Clarke に似るが, 花茎が長く, 雌鱗片が狭卵形で鋭尖頭または短芒頭であること, 果胞が無毛であることにより容易に区別できる. チチジマナキリスゲとムニンヒョウタンスゲはともに小笠原諸島に固有で, 分布は父島に限られる.