植物研究雑誌
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本州太平洋沿岸産海藻付着藍藻イワヒゲノコブCyanoplacoma adriaticaの分類
福岡 将之鈴木 秀和 神谷 充伸田中 次郎
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2022 年 97 巻 2 号 p. 63-76

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抄録

イワヒゲノコブ Cyanoplacoma adriatica (Hauck) Molinari & Guiry(クロオコッカス目Chroococcales)は,Hauck (1885) によりアドリア海産紅藻カタオバクサPterocladiella capillacea (S.G.Gmelin) Santlices & Hommersand 上から記載された.日本では岡村(1916)が褐藻イワヒゲMyelophycus simplex (Harvey) Papenfuss 上の藍藻を本種として以降イワヒゲのみに産するとされるが,分類学的研究に必要な遺伝情報は不明だった.今回本邦産イワヒゲと紅藻数種上から本種と同定できる試料を得たため,形態観察と分子系統解析により種内の形態・遺伝的差異やその系統を検討した.形態は基質間で有意な差があったが,各配列間の遺伝的差異はほぼ見られず単系統になったため,各海藻上藻体を全て同種とし,分類形質を再定義した.分子系統解析の結果,本種はプ レウロカプサ目に含まれた.Cyanoplacoma 属で唯一遺伝情報が得られていたC. regularis (Broady & Ingerfeld) Molinari & Guiry は本種と近縁にならず,本属の多系統 性が示された.今後本属の系統を解明するためにはタイプ種C. vesiculosa (Schousb.ex Bornet & Thur.) Molinari & Guiry の分子系統解析が必要となる.

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© 2022 植物研究雑誌編集委員会
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