2023 年 98 巻 4 号 p. 208-213
北海道大学農学部に所属した舘脇操博士は,地域的な植物相研究で作成した植物目録の中で,しばしば新たな種内分類群の学名を発表した.これらの原発表にはわずかな記載文のみが伴い,証拠標本やタイプ標本が引用されていないことが多い.加えて,タイプと推定される標本に発表時の学名やタイプであることを示す書き込みがないこともある.本研究では,北海道礼文島および利尻島の植物相研究の過程で,標本の引用なく記載された4 種内分類群を対象とした.北海道大学総合博物館陸上植物標本庫(SAPS) において,発表に用いられた原資料を探索し,レクトタイプ(選定基準標本)を選定した.対象分類群は,アナマスミレViola mandshurica W.Becker var. crassa Tatew.,シロバナミヤマスミレViola selkirkii Pursh ex Goldie f. alba Tatew.,シラゲキクバクワガタVeronica schmidtiana Regel var. pubescens Tatew.,コバノハイイヌツゲIlex crenata Thunb. subsp. radicans Tatew. f. microphylla Tatew. である.