2024 年 99 巻 3 号 p. 159-172
日本産サクラソウ属 Primula(サクラソウ科)14 種のうち 9 種の花粉形態を走査型電子顕微鏡 (SEM) で観察した. そのうち 7 種はSEMでの花粉観察は初めてで,同時に透過型電子顕微鏡 (TEM) で観察した 2 種の花粉壁構造研究も初めてだった.日本産サクラソウ属は,クリンソウ節 sect. Prolifera のクリンソウ P. japonica が三溝(類)内口型 3-colporoidate 花粉であることを除けば,微網状紋をもつ又状合流三(– 四)溝(類)内口型 3(–4)-parasyncolporoidate 花粉である点で比較的狭範花粉型(stenopalynous) のグループだった.観察された種間では三角形状の溝粒極域 (apocolpial field) のサイズや形に変異がある.ユキワリソウ節 sect. Aleuritia を構成するユキワリコザクラP. modesta var. fauriei とソラチコザクラ P. rorachiana は,小さな溝粒極域をもつ小さな花粉粒で,又状合流溝型と合流溝型の中間段階を示していた.ハクサンコザクラ節 sect. Cuneifoliae に属するヒナザクラP. nipponica の花粉で時にみられる溝粒極域と隣接する外壁表面部分との表面模様の連絡は,又状合流溝型と溝型の中間段階と思われる.サクラソウ属では花粉形態が節レベルの種群を特徴づけている可能性がある.