2024 年 99 巻 5 号 p. 306-309
ウチワノキは1919 年中井猛之進が朝鮮半島中部Chinsenで発見し,モクセイ科の新属新種Abeliophyllum distichum Nakai として植物学雑誌 33(392): 153に発表された.中井は新種のタイプとして4点の標本を引用したが, ホロタイプ(当時はタイプ)を指定しなかった.続けて中井 (1922) はA. distichum f. albiflorum Nakai とf. lilacinum Nakai の 2 品種を発表したが,ここでは証拠標本を引用しなかった.生育地は ‘in rupibus Ryuteiri prov. Chusei bor. Corea’ でタイプ生育地in rupibus Chinsenと異なっているように見えるが,同じ場所である.A. distichum [f. distichum] で引用された標本はシンタイプであり,TI に3点あり,1点はArnold Arboretumに送付された(Fig. 2).中井によってTypusの朱印が押されたTIの1点(Fig. 1) をレクトタイプに選定した.また,A. distichum f. albiflorum Nakai と f. lilacinum Nakai は中井が検定した原資料original materialがTI にあり,これらの中からそれぞれのレクトタイプを選定した (Figs. 3, 4).