アニメーション研究
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招待論文・寄稿文
食欲よりも思考を刺激する──高畑勲のアニメーション美学について──
顔 暁暉
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2020 年 21 巻 1 号 p. 111-125

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抄録

本論文は、何度も繰り返される主題や、キャラクターに観客を同一化させる固有の視覚的特徴を持たないがゆえに、十全に論じられてはいない高畑作品の美的資質に着目し、彼の作品におけるキャラクターと世界の構築方法を明らかにする。高畑作品の意味は、作品関連グッズ販売やファン活動から派生していない。それはアニメーション自体に内在している。高畑は、お手軽なジャンルの枠組みのなかに留まらずに、幸せで、感情的に満足できる結末には至らない叙述を生み出し、アニメーションの大衆的な魅力とその消費に異を唱えた。本論文は、『アルプスの少女ハイジ』(1974)、『かぐや姫の物語』(2013)、『火垂るの墓』(1988)、『おもひでぽろぽろ』(1991)のシークェンスを詳細に検討し、アニメの構造と美学に関する規範に対する高畑の挑戦が、彼の制作過程の一部であり、彼の作品を際立つものにしていたことを明らかにする。

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© 2020 日本アニメーション学会
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