映像作品の計量的研究であるシネメトリクスでは、ショットの平均持続時間に注目したものが存在するが、この分野の発展のためには別の指標も必要である。本論はその指標を提案し、検証することを目的とするものである。ここではショットサイズに注目し、それに対する既存の研究を整理して新たな指標を提案する。対象として、書籍として出版されているため執筆者の特定が容易であり、指標を採集しやすい絵コンテを採用することとし、手塚治虫の作品に対してこの指標を適用した。手塚は、テレビアニメーションを開始する際に必要であった経費削減のため、ショットサイズに独自の傾向があると指摘されている。それを対照的な経歴を持つ宮崎駿の絵コンテと比較することによって、指標の検証を行うことができると考えた。統計的な検証の結果、手塚と宮崎のショットサイズには有意の違いが認められ、ショットサイズは指標として有効であることが示された。