2026 年 26 巻 1 号 p. 35-41
本稿では、スタジオジブリの『火垂るの墓』(1988年)では、第二次世界大戦をテーマにした日本のアニメの代表作品として認識されることに至った様々な要因について要約する。本作品はいかにも記号論における「イコン」であることを認めるが、「戦争アニメ」というジャンルにおける作品の内容については代表的な作品ではないことを明らかにする。この点について、本稿では、日テレ系「金曜ロードショー」における『火垂るの墓』をはじめとするスタジオジブリ作品の放送履歴を簡潔なケーススタディとして用いる。このケーススタディに基づき、『火垂るの墓』の位置づけに関する誤解によって生じる、戦争アニメというジャンルの研究における問題点を考察する。そして、本作が代表的な作品であるという認識が、他の作品が国際的な観客や研究者に受け入れられる可能性を阻害していると主張する。