抄録
従来、インドにおけるコミュナル暴動については、歴史学、宗教学、政治学、社会学、経済学から、その発生メカニズムを求める研究が多く積み重ねられてきたものの、その予防に関しての具体的実証に基づいた研究は希少である。本稿の目的は、マハーラーシュトラ州の暴動発生地域で、1990年代から遂行されてきたモハッラー・コミッティによる暴動予防活動の、成立過程と関与したアクターについて、コミュニティ・ポリシングの概念枠組みに基づいて分析することである。モハッラー・コミッティの活動は、州警察と地域住民の連携に基づき、パトロール、会合開催、レクリエーションおよび就職支援といったハード面からソフト面にまで及んでいた。本稿の分析からは、暴動予防活動における州警察と地域住民の連携関係の構築が、実際には警察官個人の資質に基づいた裁量に依るところが大きく、また地域住民の意思を反映しながらも、予防活動を展開していく困難さが提起される。