南アジア研究
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2012 巻, 24 号
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巻頭特集
論文
  • ―マハーラーシュトラ州のモハッラー・コミッティによる予防活動の事例―
    油井 美春
    2012 年 2012 巻 24 号 p. 33-55
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル フリー
    従来、インドにおけるコミュナル暴動については、歴史学、宗教学、政治学、社会学、経済学から、その発生メカニズムを求める研究が多く積み重ねられてきたものの、その予防に関しての具体的実証に基づいた研究は希少である。本稿の目的は、マハーラーシュトラ州の暴動発生地域で、1990年代から遂行されてきたモハッラー・コミッティによる暴動予防活動の、成立過程と関与したアクターについて、コミュニティ・ポリシングの概念枠組みに基づいて分析することである。モハッラー・コミッティの活動は、州警察と地域住民の連携に基づき、パトロール、会合開催、レクリエーションおよび就職支援といったハード面からソフト面にまで及んでいた。本稿の分析からは、暴動予防活動における州警察と地域住民の連携関係の構築が、実際には警察官個人の資質に基づいた裁量に依るところが大きく、また地域住民の意思を反映しながらも、予防活動を展開していく困難さが提起される。
  • ―ハヴェーリー壁画にみる英領インド期の大衆美術とマールワーリー・アイデンティティ―
    豊山 亜希
    2012 年 2012 巻 24 号 p. 56-80
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル フリー
    シェーカーワーティー地方には、この地を故郷とする商業集団マールワーリーによって、1830年代から1930年代にかけて邸宅建築ハヴェーリーが盛んに建てられた。ハヴェーリーを飾る壁画の様式的特徴は、1900年以前と以後の二期に大別される。一般に、前者は土着の伝統を保持するもの、後者は印刷複製画の模倣表現が支配的で伝統を破壊するものと捉えられてきた。
    しかし、本稿における図像解釈の結果、1900年以前の壁画にはカーリーガート画など植民地インドの新たな視覚文化の影響が確認された。そして、この時期の壁画を土着の伝統であるとみる価値判断が、同時代の植民地権力による文化行政方針をルーツとしていることが判明した。
    一方で、1900年以降の壁画には印刷複製画の模写が多く確認され、これもまたオレオグラフなど同時代の新たな視覚文化の影響によるものである。大衆美術からの影響という点で、1900年以前/以後のハヴェーリーは断絶よりも様式的連続性をもつということができる。そしてこの様式的変遷は、英領インド期に商人から産業資本家へと成長したマールワーリーのアイデンティティ変容を映し出してもいる。
研究ノート
  • ―Ranbaxy Laboratoriesの事例を中心に―
    上池 あつ子
    2012 年 2012 巻 24 号 p. 81-102
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル フリー
    インド製薬産業は、輸入代替に成功し、国際競争力のある輸出産業に成長した。1970年特許法、医薬品政策、そして産業政策をインド製薬産業の発展の制度的要因として指摘できるが、ある産業の発展を検討する場合、民間企業の役割あるいは企業の能力を検討することは重要である。企業の能力とは、技術の受け入れや技術吸収能力などの技術的能力、既存の経営資源の革新的結合、そして企業家精神を総合するものであり、企業の能力の形成には、外的な環境や条件の変化が関係する。インドの製薬企業Ranbaxy Laboratoriesの企業経営史を辿り、インドの産業政策や医薬品政策と企業の能力の形成の関係を整理し検証した。環境変化に新しい事業機会を見いだし、組織の革新を通じ、新しい価値を創造する経営革新と研究開発能力を支える技術革新がRanbaxy Laboratoriesの企業の能力の中核であったと考える。
  • ―国際資本移転のジェンダー分析―
    長田 華子
    2012 年 2012 巻 24 号 p. 103-131
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル フリー
    本稿は、新国際分業論を援用しながら、金融危機後の日系縫製企業によるバングラデシュへの移転実態をジェンダーの視点から分析する。主要課題は、(1)金融危機以降の日系縫製企業のバングラデシュ移転の実態とその要因について考察すること、(2)第二次移転先であるバングラデシュ工場の特徴について、日系縫製工場の企業組織、生産・労働過程をジェンダーの視点から分析し、明らかにすることである。バングラデシュ工場の企業組織は、ジェンダー分離的、非対称の特徴を有しており、人事権、査定権は、男性生産幹部にゆだねられる。1枚の低価格帯ショートパンツに必要な66の縫製工程の労働過程を明らかにすれば、縫製工場での勤務年数、熟練度、査定との間には、合理的な説明がつかない矛盾を抱えている。他の周辺アジア諸国との競争が激化する中、バングラデシュの縫製産業にとって、ジェンダーに敏感な企業組織に基づく女性工員の熟練形成が鍵を握っている。
  • ―スリランカにおける土着の医療実践の位置づけをめぐって―
    梅村 絢美
    2012 年 2012 巻 24 号 p. 132-141
    発行日: 2012/12/15
    公開日: 2013/08/23
    ジャーナル フリー
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