南アジア研究
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研究ノート
現代インドにおける「公益の仕事」としてのヒンドゥー寺院運営
―マールワーリー商人にとってのラーニー・サティー寺院―
田中 鉄也
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2015 年 2015 巻 27 号 p. 46-67

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抄録

本稿は、ラージャスターン州のラーニー・サティー寺院を事例に、公益団体によるヒンドゥー寺院運営の特徴を分析し、その活動が基礎とする「公益性」を明らかにすることを目的とする。ジャーラーンという親族組織の極めて「私的」な女神信仰は、カルカッタに移住してきたマールワーリー・ジャーラーンが1920年代に自らの財産を「公的なもの」へと読み変えることで、寺院へと姿を変えた。 1957年に慈善協会を組織しこの寺院の占有権を勝ち取ることによって、受託者たちはカルカッタを拠点とした寺院の遠隔地経営を確立した。彼らの寺院運営は特定のコミュニティに限定した共助的活動に終始しているように見える。しかしそれは「公共の財」としての寺院をいかに運営し、何をするべきかを熟知した上で行われた「公益活動」と解釈できる。彼らは自らの活動が受託者に(血縁や地縁などの意味で)直接的に関わりのある範囲に限定された「私的なもの」でないことを証明するために、活動の恩恵を得る対象を具体的な大きさをもったコミュニティとして策定することで、彼らなりの「公益活動」を実現してきたのである。

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© 2015 日本南アジア学会
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