インドでは2000年代以降、英国植民地期に「クリミナル・トライブ」や「ジプシー・カースト」と見なされてきた人びと(DNT)への留保枠をめぐる議論が活発化している。本稿はラージャスターン州西部のジョーギーを事例として、「DNT」という上からの範疇化が人びとにもたらした影響とそれに対する彼らの応答を検討する。そこでは、植民地期以来の「カースト」という矛盾を孕んだ範疇化の上に上塗りされた「DNT」の範疇化が、NGO という新たな政治的アクターを介して実体化されていることが明らかとなる。他方でジョーギーたち自身は、能動的とも受動的ともいえない曖昧さや、非政治的な動機を含みこんだまま活動の参加者となっていることが示される。本稿ではこれを、ジョーギーたちに投射されてきた様々な上からの範疇化が、彼らを焦点化することなくいくつも重なり合い、その複数のズレの上を生きる彼らの応答的な行為実践として読み解く。